RPAロボは簡単に作れるの?プログラム経験なしの営業が、実際に作ってみるまでの奮闘記(vol.5)

2021.12.27

2018年くらいからWebやビジネス本でも目に留まるようになったRPA。今更ながらプログラム経験がないおじさん営業でも自分でRPAロボが作れるものなのか?巷では簡単と言われていますが、実際にやってみると一体何から始めたらいいのやら。紆余曲折しながらも何とか作り上げるまでの道のりと業務部門の現場ユーザーに活用してもらうためには「ツールをただ提供して自由に使って下さい」ではない『ひと工夫』が必要です。

本記事では、おじさん営業がRPAロボを作るまでの奮闘記から、現場ユーザーに使ってもらうための支援の重要性をご紹介いたします。

RPAロボで自動化、簡単に出来るのだろうか

ここ2~3年、世間ではRPAなるものが流行っているらしい。なんでも日々の定型業務を、PCの中にあるソフトウェアがロボットの如く自動で代替してくれるんだとか。社会に出てから営業部門が中心で、IT・プログラミングとは縁遠いまま歳を重ねたおじさん営業には、自分がRPAを触る日がくるとは全く想像をしてなかったのですが、ついにその日が到来した、いや、到来してしまった。
・何の業務に使うか自分で決めて良いですよ?
・しっかりRPAで業務効率化を実現して下さい?
・しかも、自分でロボットを作って良いですと?
なんて慎ましいRPA推進担当さん、いや、そこまで丸投げしてくれなくても。。。

どうやらおじさん営業が、業務選定~ロボ開発・運用を自身で行なえるかモルモットになってくれということか。新聞やビジネス書でも「RPAロボは簡単に開発できる」なんて色んなところで見かけたぞ。やってみましょうじゃありませんか!
※注:なぜか根拠のない自信のみ芽生えますが、間もなく一蹴されます。
PCにはUiPathの開発ツールである「StudioX」のインストールが完了。いざ参る。

作ろうとしたが、何から手をつけよう

さて、何から手をつけたらいいんだ?StudioXの講習やe-Learning?
待て待て、RPAロボを作ることが目的じゃない。自分の業務効率化が目的なんだ。StudioXを起動してもまだ何にも出来ない、落ち着け。
自分の業務で何を自動化できたら嬉しいか考えねば。そのためにはRPAに向いている作業を知るべきだろう。

~~~ググってみた~~~ ※日々の営業業務もあり、約1日経過

なるほど、こんな作業がRPAに向いているのか。「繰り返し」「定型」が肝なんだな。
「転記」「抽出」「集約」「分割」「送付」「照合」「登録」・・・と、作業をパーツにバラすとわかりやすいもんだな。確かに日々のPC作業はこんなことの積上げだ。
定期的に発生する且つ頭を使わない作業が良さそうということで、お客様対応が落ち着いた時や残業で対応しているものから以下3つ。
① 仕入先から発行頂いた見積書の社内システム登録
② メールで届く特定商材の見積もり依頼受付(見積台帳記入、添付ファイル保管)
③ セミナー受付(受付台帳から受講票作成・送付)

ここまでとても気持ちよくNoストレス。なんだ出来そうじゃないか。
あれ?ここまでUiPath使ってないぞ。最初はRPAロボの対象となる業務・作業をよくよく考えることが大事ってことなのか?
しっかしITの人達に開発を頼む場合は、自動化してどれだけの効果が期待できるか試算しないとだし、業務・作業フローも説明(下手したらドキュメント化)が必要だし、自分で業務選定して開発するってのも考えように依ってはありがたいのかもしれないな。いや、ホントは期待効果、自分なりに持っておけよと独りノリツッコミ。
※注:ツールも無料ではないので、期待効果の設定は非常に重要です。単純な時間短縮だけでなく、締切時間のある中でミスが怖い作業負荷・精神的負荷の軽減なども期待効果として考えるべきでしょう。

さて、いよいよ実際にStudioXを使って開発だ。もう一回、いざ参る。
えーと、真ん中に白いエリア、左側に色んな部品がExcel、Word、アプリWeb、その他、ファイル・・・。この部品から選んで白いエリアにペタペタ貼って、作業の手順をチャートにしていくってことね。
・・・結局、作業フロー作るのか!
※注:ロボットに作業をやってもらうんだから当たり前です。あなたの頭の中を可視化して下さい。

~~StudioXを開いてまだ何も作っていないのに、急激にモチベーションがしぼみ1日経過(放置)~~

誰かに仕事を引き継ぐ際、言葉で説明するだけでなく資料がある方が聞き手には確実に有用だし、突然自分がいなくなり業務が止まるなんてことは避けねばならない。いずれにしても可視化はとても重要と思う。気分一新、改めて向き合うべく再開。

フローチャート書くなんて新入社員の研修以来だよ…と、ひとりごちながら、いきなり3つのロボなんて無理だ!おじさん営業による栄えあるRPAロボ1号は、③セミナー受付に決めた。
① 社内システム登録
→自社で開発した独自システム。画面遷移やスクロールも多く、難しそうなので脱落。
② メールで届く特定商材の見積もり依頼受付(見積台帳記入、添付ファイル保管)
→メールは日々数百通受信する。その中から対象メールを特定…難しそうなので脱落。
③ セミナー受付(受付台帳から受講票作成・送付)
→Excelの台帳から、1行ずつ受講者情報を拾い、受講票作成。メール送付する作業であり、これなら出来そう!?

作業フローはこんな感じだろう。
Excel台帳から1行ずつ申込頂いた受講者情報を、
・Wordのお名前欄にコピペ
・PDF化して保存
配信メールは固定フォーマットがあるので、
・本文ヘッダーにお名前をコピペ
・メール宛先にメールアドレスをコピペ
・保存しておいたPDFをメール添付
・送信
よし!3日目にして、ようやくStudioXで開発開始だ。

……………(約10分後)早くも撃沈。
セルの情報を拾う部品はこれ、セルはここ、転記はこれ…、PDF化はこれ。一つ出来た。あれ?繰り返しってこの部品だよな。あれ?さっき指定した方法だと2行目ってどう拾うんだ?…(イライラ)…あーーー!もーダメ!!!(人格崩壊)
こうしておじさん営業のファーストトライは形が出来る前に消去されたのでした。
RPA開発、全然簡単じゃないっっっ!!!

こんな方法で、簡単にRPAロボが完成

人格崩壊の3日後、RPAロボ1号は無事に実業務で活躍を始める。
この3日で何があったのか。簡単に開発できるヒントは、知ってさえいれば当たり前の方法だった。
UiPathは全てのロボット開発をゼロから行なうのではなく、『テンプレート』というサンプルを用意してくれていたんです。
1日目: RPA推進担当に状況を相談。やっぱり無理の気持ちが80%
RPA開発の経験があるIT担当にサポートラインを作ってもらう。
2日目:IT担当にやりたいこと、拙いフローを伝える。
IT担当:「テンプレートあるけど、見た?」
おじさん営業:「それ、何モノですか?」
IT担当:「ゼロから作ろうとすると大変なのは誰でも同じで、UiPathは利用シーンが多いテンプレートを予め用意しているから、それベースにしたら楽だろー。」
おじさん営業:「マジすか…(お恥ずかしい…)」
2日目~3日目:
テンプレートを使っても、おじさん営業の独力開発では、エラーはやはり出てしまう。IT担当に都度聞きつつ、微修正を重ねて完成!

StudioX画面の右下、「テンプレートから新規作成」。なんてステキな機能でしょう。むしろこのテンプレートから、自動化できる業務を探したって良い訳だ。もちろんテンプレートの範囲ではあるが、開発も簡単、業務選定すら簡単。
※注:テンプレート利用で効率的に開発を行なうのは、当然常識の選択肢です。いくら「簡単」と言っても、やり方を知らなければ「簡単」には程遠い印象を受けるでしょう。UiPathの利用ガイドでもテンプレートの活用は必ず触れていますし、それより何より、すぐに相談したら良かったのに…。

利用したのは、一番上の「ExcelからWordテンプレートを完成しメールで送信」。やりたいこと、そのものじゃないか!
このテンプレートを開くと、既に部品が順序良く配列されている。
繰り返しの部品が一番最初に置いてある。うんうん、自分がやろうとしていた手順は間違っていなかった(ホントか?)。ただ、データの指定方法がわからなかっただけ。Excelデータの1行ずつ、Wordを作りPDF化して、メールも作って送信するんだね。メールは、自分がチェックした上で最後にまとめて送信するので下書き保存までにしておこう。
あ、PDF化したものを保存する場所も指定しなければいけなかったんだ…。
それがないと、メール添付するファイルも探せないから当たり前だよな…。
※注:おじさん営業はテンプレートの忠実なシモベになり、この時まさに「霧が晴れる」を体感した。

まとめ

RPAロボ第1号のおかげで台帳記入されたセミナーお申込みの方々に、当日中に受講票送付がミスもなく、苦も無く出来るようになりました。RPA効果は作業時間短縮もそうですが、ミスなくメール送信まで準備できる点が非常に大きい!
最初は前途多難も、聞くべき人に聞き、ちゃんとしたやり方さえ知っていれば、確かに「RPAは簡単」なのかもしれません。
一方でRPAは、IT経験も少ないイチ業務部門の人間が、ツールだけ与えられて効果を出せる夢のようなツールではないってことですね。モチベーションが著しく低下するのも、あながち事故とは片付けられないでしょう。
RPAは何ができるのか、適用作業の向き・不向きから、開発の方法、それこそアイデアの共有まで、業務部門の現場ユーザー教育や支援体制があってはじめて、現場ユーザーが継続的に取り組める環境と言えます。

本記事では「RPAロボは簡単に作れるの?プログラム経験なしの営業が、実際に作ってみるまでの奮闘記」と題し、業務部門のEUCの一端を(お恥ずかしい限りですが)ご紹介しました。

EUCを推進していくためには、以下のような支援体制の重要性をお感じいただけたのではないかと思います。

「RPAは簡単」は事実であり、また事実ではない。各社や各ユーザ―のスキル・環境によって全く評価が変わります。現場ユーザーには、EUCで出来る範囲を明確にし、必要な支援体制・メニューを提供することが肝要です。そこから溢れるニーズや課題は、外部のプロ(ITベンダー)を頼るのも一考でしょう。

弊社ではRPAの推進と活用をもう一度はじめたい方に参考になる資料「今こそ言える、RPA成功への近道 ~推進と活用の2軸から‘もう一度’はじめましょう!~」をご用意しております。本資料は、RPA導入や再活用に向けて必見の資料です。ぜひダウンロードいただき、ご覧ください。」